2016年7月18日月曜日

「嫌われる勇気」を読んだ感想




 294ページありますので結構読むのに時間がかかります。
 対話形式で,青年の疑問に哲人が答えるという夢を叶えるゾウ的な雰囲気で話は進みます。

 「思考は現実化する」ナポレオン・ヒルのような読んだらどうすればいいかわかる本ではありません。
 色々ヒントは与えてくれますが,最終的にこうすれば良いという答えはありません。ヒントの部分はなるほどと思えることも多いですが,結論っぽい終盤になると抽象的なことばの嵐になってきます。そこがフロイトやユングよりメジャーにならなかった理由ではないかと思いました。

 内容はおおまかにはこんな感じです。
 フロイトはトラウマが存在するというが,トラウマは存在しない。トラウマがあるから引きこもったりするのではなく,外に出たくないからトラウマを作りだす。
 人は変わりたい欲求を持っているフリをしているが,結局は変わりたくないのである。例えば小説家になりたい人が「今は時間がないから書けない」と言い訳をするのは「時間があれば小説家になれる。」と同義であり,小説家になる可能性を持ち続けることができるからだ。

 しかし,例え可能性が潰れようとも小説は書くべきである。可能性が消えた自分も受け入れた方が良い。自分というのは存在するだけで価値があるのだから。
 
 全ての悩みは対人関係であるが,相手の価値観を変えることはできないので,割り切るしかない。しかし,孤立するのではなく,共同体全体の利益を考え,他者貢献していくことが大切である。
 そうすることによって相手も自分のことを無下にし続けることはしにくい。

 人は自分を特別な存在と思ってもらうために承認欲求を持っているが,そんなものはくだらない。自慢ばっかりする人は劣等感の裏返しである。優越性を追求するのではなく,今日1日,今一瞬を頑張ることに意義がある。


 と,なるほどと思うこともあれば,えっ結局どうすればいいの?という感じで終始進みます。なので,結局どういうことかを簡単に表現できません。考え甲斐があるので,心理学や社会学が好きな人には面白いと思います。

 本を読むまではタイトルだけで,「対人関係で悩む人向けに,思い切って嫌われたら楽になるよ」っていう本かな?と思ったんですけど,逆ですね。自己への執着を他者への関心に切り替えていこうって言うてますからね。他者貢献っていう言葉を使って道徳のようなことを説いてもいるんで,嫌われても良いから自分らしくいこう!とこの本をとった人は肩透かしをくらうことでしょう。

 安易な答えが欲しかった人もしまった,思ったより難しい…となるでしょうけど,物凄く人生を考えるうえでのヒントは散りばめられてるんで,無駄にはならないです。結局哲学は人それぞれ答えが違うんで自分で考えざるを得ないので,こういった本でヒントを得ながら考えていく方がいいでしょう。しんどいですけど。
 

 

 

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