2016年8月20日土曜日
コンビニ人間感想 村田 沙耶香
今年の芥川賞作品です。
18年間就職も結婚もせずにコンビニでアルバイトとして働き続ける古倉恵子という人が主人公です。主人公は子供の時から変わった子で,小鳥が死んでも可哀そうとも思わず,ケンカを止める時にスコップで叩いたりしていたので,親は病院に連れて行ったりしますが,結局少し変わったまま大人になりました。
大学在学中に色々バイトをしてみますがどれも続かず,自分はもうダメかと思ったけどコンビニだけはしっくりきて,以後コンビニバイトをひたすら続けます。
そしてコンビニ18年目に新たに入ってきたこれまた変わった男,白羽が現れ,コンビニで働きつづけるなんてありえない,結婚しないなどありえないと色々罵倒されますが,ひょんなことから同棲を始め,白羽によりコンビニを辞めて派遣会社の面接に行くところでふと寄ったコンビニで居心地の良さを思い出し,面接をやめてコンビニで働きだそうとするところで終わります。
物語が物凄くリアルなんですけど,作者の村田さんは現在もコンビニで働いており,ほぼ私小説だそうです。
コンビニの描写もリアルなんですが,ここの登場人物達も「あぁ,こんな人いるな…。」と思わせる人たちで,特に白羽という男は36歳になって就職もしないのにプライドは高くて,お客さんにストーカーしたり,人妻の泉さんを口説いてみたり,すぐに縄文時代の話を持ち出したりうっとおしいんですけど,こういうタイプの男はリアルにもいます。
そして古倉さんの同窓会の女友達も何気にうっとおしくて,結婚せずにアルバイトをずっとしている古倉さんに色々アドバイスしてきます。
日本は特に異端者に対して冷たいので,定職につかない白羽だけでなく,ずっと結婚をしないアルバイトの古倉さんに対しても変わった見方をします。
しかし,古倉さん自体は自分のことを不幸だとは思っておらず,コンビニで働いているだけで幸せなんです。コンビニで仕入れや発注,接客やセール中の唐揚げ棒を売りまくるということが楽しいのに,周りの人が勝手に不幸というレッテルを貼ろうとします。
かといって白羽のような男と無理やり同棲するのはどうかと思いますが,それは彼氏がいれば周囲は安心するという目的で始めたもので,古倉さんも周りから変な人と思われるのはイヤだということです。
私は大阪時代が長かったのでフリーターや高齢独身に対しての偏見はないんですが,田舎や上の世代には結構あると思います。日本はイギリスのような階級はありませんが,特に中流が下流を馬鹿にする傾向があるように思えます。
上流からすれば中流も下流も年収に大差はないんですが,まだ全員が平等になってから150年も経っていないため,中流のプライドが変に高いです。
しかしこういった人間の意識や社会を変えるのは難しいので,古倉さんは結婚する気がないのであれば,お金を貯めてコンビニのオーナーになるしかないと思います。これだけコンビニが好きであれば,場所さえ間違えなければ誰に何を言われることなく,一生楽しくコンビニの仕事ができることでしょう。
そして同窓会など行かなければ良かったんです。知人が多ければ多い程,自分が没落した時に色々と言われますが,そういった程度の低い人たちとは早めに縁を切って楽になった方がいいでしょう。
話が逸れましたが,コンビニ人間面白かったです。一気に読めて色々考えさせられました。
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